アイヌ文化は過去の”止まった文化”ではない!今も変化し続けるその理由とは

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みなさん、こんばんは。愛原 夢音です♪

今回は、鈴木舞さんがパーソナリティーを務める
世界のあこがれ〜北海道ブランド〜から
北海道の魅力をお届けしていきます。

 

今、世界から注目される北海道

この番組では、北海道が世界に誇る自然、文化、
産業などをピックアップ。

北海道が持つ魅力や可能性をゲストの方に伺います。

 

今回のテーマは、アイヌ民族の木彫り工芸品

 

漫画「ゴールデンカムイ」や直木賞に輝いた小説「熱源」、
そして民族共生象徴空間「ウポポイ」のオープンと
注目を浴びるアイヌ文化。

その中でも木彫りは幕末の文献に”細工が精妙”、
つまり巧みで優れていると記載されているほど、
高い技術を持っています。

さらに近年は、伝統的な技に創意工夫を加える
木彫り作家き様々な作品を生み出し、大英博物館で
展示されるなど、国際的な評価も高まっています

北海道大学アイヌ先住民研究センター准教授、
山崎幸治さんをゲストに、
アイヌ民族の木彫り工芸品について伺います。

 

今回のポイントは、変化

 

何が変化しているのでしょうか。
みなさんも、一緒に考えてみてくださいね。

 

Contents

なぜアイヌ文化の研究の道へ?きっかけは趣味のアウトドア

 

 

まずは、山崎さんがどんな研究をしているのかに
ついて書いていきたいと思います。

山崎さんの専門分野は、文化人類学という学問。

もっと細かく言うと、博物館を舞台にした
文化人類学ということになります。

博物館の民具や物質文化の史料、博物館の展示や
アイヌ民族の文化
について研究をされています。

実は山崎さん、研究だけではなく工芸品をつくる際の
材料となる木材を実際に集めに行くこともあるようです。

工芸品の中に、アットゥシというものがあります。

これは、コヒョウという木の内側の皮の繊維を使って
布を織る織物
なのですが、毎年6月頃に山に行って
その皮の繊維をとってきます。

この作業を、山崎さん自ら進んで手伝うそうです。

 

アイヌ文化を研究しているので、
北海道出身かと思いきや…

 

山崎さんは北海道出身ではないんです

 

意外ですよね。

山崎さんは、福岡県北九州市八幡のご出身。
八幡製鉄所で有名なところです。

福岡県と北海道。北海道とはかなり離れた場所に
いらっしゃった山崎さんですが、なぜアイヌ文化の
研究の道に進むことになったのか。

みなさん、気になりませんか?

山崎さんがアイヌ民族の研究をするようになった
きっかけというのは、趣味のアウトドアです。

キャンプ好きのやまさきさんは、
アウトドアの技術に常に興味があったそうです。

雪国と呼ばれる寒い地域に、
なぜたくさんの人が暮らせるのか

そのことに関して、
山崎さんは非常に興味がありました。

最初はアラスカの先住民を研究しようと
したようですが、山崎さんが大学院に入ったときに
強い関心を寄せたのが、アイヌ文化

アイヌ文化の魅力にどっぷりとハマっていき、
それから約20年間アイヌ文化について研究し、
今に至ります。

それにしても、20年間ってすごいですね…。
情熱がないと、なかなかできないことですね。

アウトドアがきっかけでアイヌ文化を
研究するようになった山崎さんですが、
生きる知恵を知りたいという強い好奇心から
アイヌ文化の研究に進んでいきます。

雪国や北国では冬は非常に厳しい環境です。
極寒…ですからね。

そんな環境で、どのように食料を獲得し
どういうところに住むのか

そして、そんな環境でどのように快適に眠るのか

そんな疑問を開所したいというのが
山崎さんの研究のスタートだったということなんです。

 

アイヌの木彫り工芸品にはどんなものがある?

 

 

アイヌの木彫り工芸品には、
どんなものがあるのでしょうか?

木彫りというと、木彫りのクマを想像する方も
いらっしゃるかもしれませんが、それだけではないんです。

まず江戸時代後半から明治時代までですが、
基本的に生活で必要なものは全て自分でつくります

料理に使う杓子や食器、山で使うナイフなどの
ありとあらゆるものを全て自分でつくっていきます。

外から入ってきた漆器のようなものは舶来品として
儀式のときに使われ、珍重
されました。

ただし、これはあくまでも儀式などの
重要なときのみ。それ以外は使用しません。

当時のアイヌから見れば日本人は”外の人”。
和人と呼ばれていたくらいですからね。

日常の道具はかなりの部分で
自らつくっていた、ということです。

 

工芸品というと、どうしても美術品をふっと
浮かべてしまいますが身の回りの物を
木で彫ってつくっていた
ということがわかりますね。

主につくっているのは生活用具なのですが、
時代の変化によって、美術的な工芸品として
つくられるようになった、なんてものもあります。

 

アイヌの木彫り工芸品が盛んなのはどこ?

 

 

アイヌの木彫り工芸品の製作が盛んな地域は
いくつかあるのですが、代表的なのが
日高の近くにある沙流川の中流域にある、
平取町の二風谷(にぶたに)という地域。

ここが、木彫りが1番盛んな場所です。

民族象徴空間ウポポイがある白老や阿寒といった
地域においても木彫りは盛んとなっています。

 

それぞれの地域には特徴があります。

地域の先輩から教えてもらいながら木彫りを
製作していくので、同じ木彫り工芸品というジャンルでも
地域によって違いが出てきます。

 

木彫り工芸品にはどんな木材が使われている?

 

 

木彫り工芸品が盛んな場所についてわかったところで…

木彫り工芸品にはどんな木材が
使われているのかについてみていきましょう。

使われる木材の種類はいろいろあります。

かたい木を使うこともあれば、
やわらかい木を使うことも。

たとえば、クルミの木シナの木

これらは比較的やわらかいので、
彫りやすい
という利点があります。

一方で、小刀はかたい木を材料につくっていきます

ナイフの柄の部分は、やわらかい木でつくってしまうと
ポキッと簡単に折れてしまいます。

そのため、簡単には折れないかたい木を使うんですね。

木彫り工芸品に使う樹脂はつくるものや用途に
合わせて
使い分けています。

 

木彫りのモチーフをなかなか彫らなかったのはなぜ?

 

 

木彫りには、モチーフがあります。

動物や人間のかたどった木彫りは、
アイヌの人々はあまりつくらなかったそうです。

それは一体、なぜなのでしょうか?

 

まず、”ヒクパシィ”を例に説明していきたいと思います。

これは、儀式で使うお酒をささげる
へら
のような道具です。

その道具には、クマなどのモチーフや
彫り物が施されています。

その他にも、儀式の際に使用するかんむりの先端
具象的なものが彫られるなどしています。

ただ、これらの彫り物は非常に限定的
気安く作らないという意識は常にあったそうです。

 

なぜ、あまりそういうものを彫ってはいけないという
意識が根強くあったのか。

その理由は、具象的なものには魂が入っている
信じられていたからです。

そこに魂が入ると、何が起こるかわからない。

良いことが起こるかもしれないけれど、
もしかしたら悪いことも起こるかもしれない。

そう思われていたこともあって、なるべく
そういうものは避けようという傾向は強かったようです。

いたずらにつくらない方がいい、と
いうことだったんですね。

ですが、時代の中で文化は変化していきます。
有形のものもそうですが、”精神文化”も
時代とともに変わっていきます

そんな流れの中で、木彫りのクマが
つくられるようにもなってきました。

何をモチーフにするかということは、
時代とともに変化してきています。

 

ここで、私たちが気を付けなければ
ならないことがあります。

それは、アイヌ文化は過去の、
”止まってしまった文化”という見方をしないということ。

時代によって、アイヌ文化はどんどん変わっていくと
いう見方でみていく必要があるのです。

時代時代によって変化していく
これからもどんどん変化を続けていくということですね。

古典的に考えないということが、アイヌ文化に限らず
どんな文化においても重要です。

 

木彫りの作品には、装飾性の高いものが多いですが
これはどうしてなのでしょうか?

これには、いくつかの要因があります。

 

1つ目は、儀礼に使う道具は綺麗に
飾り立てたものを使う
ということ。

2つ目は、いろんなものには魂が込められている
いうことです。

ものに宿っている魂のために飾ることで
その魂に敬意を払うといった意味があったと
いうことも想定できます。

3つ目は、木彫り作品を見ただけで
その人の技量がよくわかるということです。

アイヌの人々は、小刀だけでなく
煙草入れのケースも木彫りでつくっています。

これらは、かつて日常的に腰からぶら下げていました。

当然、これらは自分でつくったものなので
常に身につけているとその人の技術、つまり
上手、下手の判断の指標になるということなんです。

自分自身で身につけるものは気合を入れて
つくるため、装飾性が高いということなんですね。

4つ目は、外からの視点。
これが、とても重要になってきます。

江戸時代の後期からは外部から、つまり
北海道に来ていた和人の役人などに自分たちが
つくった木彫りの作品を売ったり渡したり
して、
食料を得たりしていたんです。

そういう点では、観光にもつながりますよね。

木彫り工芸品として、付加価値をつけて
それを商品として渡す。

それと引き換えに食料を獲得できるわけですから、
ビジネス的な面も考慮してつくられたということも
あるかもしれません。

 

儀礼的な意味だけでなく、単純に凝っていた方が
かっこいいという理由からも、装飾性の高さが
いかに重要かがわかりますよね。

なんでもかんでも精神論や儀式、宗教観に
結びつけるのではなく、木彫り作家の独創性や
創造力といった個性が大切

その点では、今も昔も変わらないですね。

 

ここまで、アイヌ民族の木彫り工芸品について
お伝えしてきました。

いかがでしたか?

 

 

今回のポイントは、変化

 

 

学生のとき、歴史の授業で室町文化、桃山文化、
元禄文化といった時代ごとの文化の特徴について
学んだ記憶が、みなさんにもあると思います。

アイヌ文化もそれらと同じく、
時代の中でどんどん変化している

そして、その変化は現在進行形なんですね。

今後も、どんな作品が生まれていくのか楽しみです。

 

次回は、注目の木彫り作家についてお届けします。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
次回もお楽しみに…♪

 

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