みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
西山美食話から、美味しいトークエッセイをお届けしていきます。
今回は行ったつもりで楽しむ世界の料理、アラカルト。
世界各国の歴史やミニ知識をご紹介します!
どうぞ、最後までお付き合いください!
Contents
日本には自由に海外旅行できない時代があった
誰もが自由に海外へと旅立つ。
そんな当たり前が当たり前ではなかった時代が、日本には長くありました。
江戸時代まで海外の渡航は基本的に禁止。
近代国家となった明治時代にあっても、認められていたのは特別な留学や仕事、
国家戦略としての移民など限られた渡航のみ。
観光が目的の旅が可能となったのは、
第二次世界大戦が終わり19年を経た1964年のことでした。
日本経済の復興が進むにつれ貿易などが盛んになり、
東京オリンピックが開催された1964年春。
ようやく海外旅行も自由化されたんですね。
ちなみに、当時ヨーロッパに2週間ほど滞在する旅の料金はおよそ66万円。
当時の大卒者初任給が2万1000円ですから、大変高価なものでした。
気軽にしかも多くの人が手の届く料金で海外へ行く。
そうなってからの歴史は浅く、望んでも実現できなかった時代がずっと続いていた。
そう思うと、今のような状況でももう少しの辛抱だという気になりませんか?
”中国の全ての味がある”故郷の味を受け継ぎ進化する四川料理
中国4大料理にその名を連ねる、四川料理。
四川とは、中国西部に位置する四川省のことを指し、
その中心都市が成都です。
生徒の面積は新潟県とほぼ同じくらいですが、
東京都より300万人ほど多い1630万人もの人が暮らしています。
この成都で花開いた四川料理ですが、その成り立ちはやや複雑です。
成都は、13世紀末と17世紀中期に大きな戦乱がありました。
その過程でそれまでの料理の文献やレシピが全て失われ、
豊かな食文化が消失する危機にあり人口は激減。
一計を案じた皇帝は、街の復興のため中国全土から200万人もの農民や商人をかき集め
強制的に成都へと入植させたのです。
そのとき彼らが携えてきた食材や調理法が四川の豊かな恵みと出会い、
3000種とも4000種ともいわれる膨大なメニューが形成されていきました。
四川には中国の味のすべてがあるといわれていますが、
それは多くの移民が伝えた故郷の味が現在の四川料理に受け継がれているからなんですね。
移民がもたらしたものとして重要なのが、旨味。
中国各地で培われた干し魚や干し肉の加工技術。
トウチやジャンといった発酵調味料か複雑な旨味を醸し出す四川料理を支えることとなりました。
現在、唐辛子と山椒のしびれる辛さ、
マーラーが四川料理の代名詞。
マーラーは日本だけでなく東洋、西洋を問わず
愛されているといっても過言ではありません。
日本人に最も馴染みのある麻婆豆腐はマーラーを使った四川料理ですが、
口の中いっぱいに広がる辛さと熱さ。
少し遅れてやってくる山椒のしびれるような刺激が、たまりませんよね。
日本ではマーラーを使った、火鍋も一時期ブームになりました。
成都の料理人は皆、
「四川料理の真髄は、新しい食材を貪欲に取り入れ地元の味と融合させ発展させることだ」
と、口を揃えます。
四川料理は、まだ発展途上。
これから進化し、新しいメニューがどんどん生まれることでしょう。
イベリコ豚の生ハムはスペインの最高級品
中国を離れて、次に訪れるのはスペインです。
スペイン料理といってすぐに思い浮かぶのがイベリコ豚。
日本でも、もうすっかりお馴染みですよね。
イベリコ豚には二種類あり、1つは冬の間どんぐりの森で暮らし
その実を食べて育つベジョータ。
もう一つは、人間がどんぐりのエサをやって育てるセボ。
ベジョータの数は少なく、全体の10%に満たないとか。
そしてスペインが誇る特産品といえば、このイベリコ豚を使った生ハムです。
つまりイベリコ豚、ベジョータを使用した生ハムは最高級品といえるでしょう。
生ハムは、ローマ時代からつくられていました。
製法は極めてシンプル。
豚の腕肉、もも肉に塩をふって水分を出しつりさげて熟成させるだけ。
ベジョータは森の中を駆け回って育ちます。
たっぷりと運動しているから、肉質が筋肉質です。
ベジョータだけを使って生ハムをつくる工場では、
その肉を5年かけて熟成させます。
時間をかけてつくっているため賞味期間も長く、
1年以上保存できるそうです。
スペインではお祝い事はもちろん、
日常の食事にもよく登場するといいます。
スペイン人にとっての生ハムはイタリア人にとってのパスタ、
フランス人にとってのバケット、ノルウェー人にとってのサーモンのようなもの。
日本人ならば、ごはんといったところでしょうか。
日本でも、生ハムを目の前でカッティングしてくれるレストランが増えましたよね。
生ハムのカッティングには、細心の注意が必要です。
分厚いのはだめ。
適度な薄さと大きさを守るのがルールです。
しかも、生ハムはカッティングしてすぐに食べてはいけません。
お皿の上で脂が柔らかくなるのを数分間待ちます。
そうすると、脂と塩が肉の甘みを引き出して味のハーモニーを奏でるのだそうです。
“米の底力”を知るベトナム料理
最後はアジアに戻って、ベトナムを訪ねてみましょう。
ベトナムは今や世界一の米輸出国。
この国における米料理のバリエーションには、目を見張るものがあります。
日本人にも馴染みのあるフォーは、ベトナムの麺料理を代表するもの。
その歴史はそれほと古くはありません。
フランス占領時代に、フランス人の味覚に合わせて誕生したといわれています。
しかもお店で食べることがほとんどで、
家庭の食卓に上がることはあまりないそう。
米粉を引き伸ばしてつくるフォーに対し、ブンと呼ばれる麺料理は発酵させた米粉を
お湯の中で押し出してつくられるため、少し酸味があってコシも強いといいます。
こちらは、過程でよく食べられる庶民の味なんだとか。
さらにベトナム料理は、巻くことが得意。
牛や豚の肉、野菜、ハーブなどをライスペーパーで巻いたネム・タイやバインセオ、
米粉のクレープでまいたバインクオン、米粉の春巻きともいえるネムザンといったように
米粉の生地で具材を巻き、蒸したり揚げたり焼いたりすることで様々な食感を生み出し、
味もバラエティ豊かです。
日本でいう、おこわもあります。
緑豆のペーストと野菜入りのバインフック、ターメリックで炊いた定番おこわ
ソイなど、日本のおこわとは全く違ったエスニックな味わいです。
また、スイーツにもお米が使われています。
バインチャイは、くずでとろみをつけた白玉のようなおかし。
コムは、早熟の緑の状態で収穫したもち米を使ったおやつ。
どれもこれも、アジアンスイーツという印象です。
1980年代末のドイモイ政策以前は、
配給制でお米も満足に手に入らなかったベトナム。
様々な困難を乗り越えて、短い間に豊かな米料理文化を花開かせたということなんですね。
お米がこんなにも形を変えて食卓を彩るとは、
まさにお米の底力を感じるベトナム料理です。